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▼駄文 第10回 コンサート ちょっとだけ補足

まず、コンサートにいらしてくださった皆様、
そしてDVDをお求めになっていただいた皆様に、心から感謝いたします。

当日の演奏に関して、いろいろ不思議なこと、疑問に感じることもあったと思うので、
DVDの発売に合わせて、ここに少々補足説明いたします。
演奏に興味を持たれた方の少しでもお役に立てたら、と思う次第です。
また、本当は一曲ずつご説明するべきですが、
要点だけ抜粋させていただくことをお許しください。

1.実は、113名。

ステージ上の人数は112人とされていたが、本当は113名であった。
詳しく説明すると…

オーケストラパート
ストリングス
1stVL12,2ndVL10,VLA8,VCELLO8,C.BASS6
トランペット
3
トロンボーン
3
ホルン
6
チューバ
2
フルート
2
オーボエ
2
ハープ
 
混声コーラス
20
リズムパート
ドラム
 
ベース
 
キーボード
2
パーカッション
3
太鼓の茂戸藤さん
 

そこに坂本美雨さん、児島由美さん、エルジビエタ・トワルニツカさんの唄のゲスト、
西田社中のみなさん15人、バックコーラスの広谷さんと山田さんが加わる。
最後に指揮者の配島さんと私を加えると、ステージ上の人数は総勢113名なのである。

112名というのは、自分を入れてなかったからだった…。

2.ウォーターホン
Photo
私が"Unnatural City"等で演奏した銀色の不思議な楽器があったと思うが、
あれはウォーターホンという楽器である。
この楽器は、共鳴する金属製のボウルみたいな容器に水を入れ、
そこから何本か生えている金属製の棒を弓で擦ると、
あの"キーキー"というヒステリックな音が出るのだ。
水は、楽器を揺らして不規則に音程を変えるために使用されるが、
今回はひっくり返してセッティングしたため、水は入っていない。

3.民謡コーラス
Photo
会場にいらしてくださった方や映像をご覧になった方はお気づきになったかもしれないが、
西田社中だけではなく、東京混声合唱団の女性コーラスも一緒に唄っていたのである。
ステージ上ではリズムパートのほぼ全員が太鼓をドカドカやっているので、
パワー配分として、東混の方々にも主にハモのパートを唄っていただいたのだ。
西洋的なコーラスと日本の民謡がハモるとどうなるのか…実は初めての試みで私も大変興味があったが、
予想以上にキレイに融けていて驚いた。

4.亀の真相

これは、まずバンリュージスタジオについてお話ししたい。
場所は目黒の環六沿いにある蟠龍寺の境内に、いきなり音楽スタジオがある。
私は20数年前、リハ等でよく利用させていただき、そこのオーナーであるY氏とも仲良くなっていた。
ある日、境内にある池を見せてもらうと、数十匹の亀がいたのだが、
なぜかお寺の名前と数字が金か銀のペンで甲羅に書かれていた。
理由を訊くと、なんでも亀はあちこちに徘徊するため、迷子にならないようにとの処置だったそうだ。
実際、環六にうっかり出てしまった亀が車に轢かれ(普通の車ではつぶれない)、
怖くなってうずくまっているところを近所の人に救助されたことが何度もあるそうで、
やむをえずナンバリングに踏み切ったとのことであった。
つまり、これは断じて私のイタズラなどではないのだが、野良亀なんか滅多にいるもんじゃないので、
実は甲羅に所属を書く意味があったのか、今となっては疑問が残る…。

5.攻殻のパーカッション
Photo
謡IIIはさまざまなパーカッションが使用された。
小節頭に打つ"どん"という音は、菅原さんと大河原さんの叩くジャンベ、
史郎さんと外間(ほかま)さんの叩くタム、それから私のバヤとタムで構成されている。
また、外間さんが叩いていたカホーンという木で出来たスリットドラム、私が叩いていた鉄パイプ、
重要なポイントである真鍮製の鈴等、これらのすべての楽器は攻殻のレコーディングで実際に使ったものである。
ついでに言えば、私の使ったエスニック太鼓(バヤ、ムリタング等)や、イントロの小さなタイゴングも同様だ。
しかしこの曲、静かでゆっくりした曲調ながら、やることがかなり多く、リズムパートは大忙しだったのだ。

6.映像
Photo
スクリーンに映写された映像は、それぞれの映画本編からお借りしたものである。
編集しないでそのまま使用したものもあるが、多くは曲の構成に合わせて再編集したのだが、
これが大変だったらしい…。
私はいい気なもんで「こんなカンジで編集お願いします」なんてことを言うだけだが、
編集する方はその映画を全て観なければならず、たいそうな時間を要したそうである…。
"月見の小泉"さん、どうもありがとうございました(^^;)。

7.美雨ちゃん

彼女とは、"風光る"を作ったところからのおつきあいである。
なかなかご本人の人柄は紹介されないものだが、彼女はとってもナチュラルでやさしい女性であり、
ウチの事務所で私の猫を撫でまくっていたのが印象的であった。
"ニクキュウブロローグ"というブログをやってらっしゃるので、どうかご覧になっていただければと思う。
ちなみに、ニクキュウは、肉球の意である…(^^)。
それにしても、彼女に2曲歌っていただいた時、私は自分のコンサートということを忘れ、
バックバンドのギタリストになりきっていたことを白状しなければならない。
DVDのライナーにも書いたが、自分がメインになることは本当に興味がなく、
美雨ちゃんのような歌手の後ろでギターを弾いているのが本来の自分の姿であり、それが楽しいのである。
要するに映画の劇伴を作るのと同じ感覚なのかな…。

8.キーボード
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今回、重実さんと平田さん、2人のピアニストでキーボード全般をやっていただいたが、
ピアノは基本的に一部は重実さん、二部を平田さんにお願いした。
なるべくレコーディングでピアノを担当したご本人にお願いしたい、という意向もあったのだが、
偶然にも一部と二部がなんとなくそういう選曲になっていたので私も驚いた。
ちなみに、重実さんは最初のOVAのパトレイバーからのおつきあいだから、もうかれこれ20年だし、
平田さん(ひらっちゃんと呼んでいる)に至っては、25年近いつきあいだ…
また、ドラムの史郎さんもパトからだから重実さんと同じ20年、池間君は平っちゃんより前だから、
26年以上前かな…なんか、感慨深い。

9.トワルニツカさん
Photo
正しくは"トワルニッカ"ではなく、"トワルニツカ"と発音するそうである。
コンサートの翌日、再び横浜のランドマークである曲のレコーディングをしたのだが、
そのあとヨドバシにパソコンを買いに行かれたようだ(^^)。
ちなみに、彼女も猫が大好きだそうで、猫の話で盛り上がった。
私もその帰り、スタジオの隣にあったカツミにうっかり立ち寄り、
そこで憧れのEF63を衝動買いする(^_^)v!
「コレはね、碓氷峠でエア抜いてシャコタンにした189系をね…」と熱い萌え萌えの説明を私のスタッフにするが、
前日の疲れがあったのか、興味がなかったのか、誰も聞いちゃあいなかった…。

10.ティンパニー10個
Photo
なぜ10個必要だったかは、まずティンパニーの構造を説明する必要がある。
ティンパニーは、それぞれにペダルがついており、その踏み加減で音程が変わるようになっている。
ゆっくりな曲であれば、そのペダルで音程を調整できるが、"Log in"のような叩きっぱなしの曲では、
微妙なペダルの調整をやっている時間はない。
そこで、必要なほぼ全ての音階のティンパニーを用意する必要があるのだが、
10個を1人では叩くことは物理的に無理なため(とどかないから)、
6個と4個に分けて2人で叩くことになったのである。

11.ローズ(Rhodes)
Photo
古くはフェンダー・ローズと呼ばれ、いわゆるエレピの元祖である。
私はこのエレピが大好きで、たびたびレコーディングでも使用している。
その独特なコロコロした暖かい音は、シンセでもさんざんシミュレートされてきたが、
やはり本物の色気まで再現は難しいみたいだ。
唯一、Rhodesブランドで日本のローランドが作ったMK80というエレピはかなりローズの本質をつかんだ製品で、
私はいまだに愛用している。
これまたどうでもいい話だが、もし中古で見つけたらDTM派の方はお求めになってもいいかもしれない。
(重くてでかいが、20インチのディスプレイだったら3個乗りますよ)
今回のコンサートでは、"少女のテーマ"だけのために、
本物のローズピアノのスーツケースタイプを用意してもらったのである。

12.トラックダウン

今回のTDは、コンソールの限界もあってオーブではなく、
一口坂4stで行われた(オーブは64ch、一口坂は80ch)。
もともと160ch以上あるので、ある程度ProTools内でまとめざるをえないし、
普通はデジタル卓を使って落とすのがリーズナブルなんだろうけど、やはりアナログ卓で、
ということになり、久々の一口4stでTDをした。

しかし、160chをいっぺんに再生するのは、さすがのToolsも厳しかったみたいで、
時々止まるとか、動作が遅い、音が出ない等いろいろあり、
もしコレをデジタル卓でミックスしてたら一体どうなっちゃったのか、考えるだけでゾッとする。
それも、プラグイン等のエフェクトは一切使用せず、
5.1chと2ch用はもう一台Toolsを用意しているにもかかわらず、だ。
まあ、こんな非常識なTDは普通ありえないんだけど…。

13.DVDのエンディング
Photo
最初、"Gray Lady"でいくことになっていたが、いざスタッフロールに合わせてみると、
穏やかでしっとりはしているんだけど、なんか違和感が…。
そう、これだとまるで私の追悼コンサートみたいになってしまうのだ。
特に最後のみんなで万歳する所なんかは"永遠に"とか"享年…"
みたいなテロップを思わず入れたくなるほどの雰囲気である。
とはいえ"Gray Lady"にしようと言ったのは私だったので、
恐る恐る、そのことを映像チームの方に告げる…。
しかし、みんなもそう思っていたらしく、爆笑された。
そこで急遽"少女のテーマ"に差し変えることとなったのだ。

番外話1.お客様

会場には、私の仕事関連でお世話になっている、実にたくさんの関係者の方においでいただいた。
その中でも、わざわざ韓国から"野獣"のキム・ソンス監督がいらしてくれていた。
監督は、"野獣"の曲をやることは知らなかったので、とても驚き、すごく喜んでくれたそうである。

番外話2.オフィシャルカメラマン
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今回のコンサートのオフィシャルフォトを撮ってくれた菱田さん、すごく美人でカッコ良くて、
私みたいな怪しいオヤジを写すより、ご自分が被写体になった方がよっぽど良いのでは、と本気で思った。
実は彼女、ミュージシャンからも大好評であったのだ…(^^;)

番外話3.打ち上げ
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どうでもいい話だが、コンサートの数日後、打ち上げが行われた。
ミュージシャンの方や、コンサートを支えてくれたスタッフの方々とお話が出来て、本当に楽しい時間を過ごせた。
2次会、3次会とハシゴして、最後はとうとう開いているお店がなくなり、みんなでジョナサンへ。
そこで私はハンバーグをつまみに芋焼酎を飲む、という蛮行に出たが、もっと凄いのは指揮の配島さんが、
この期におよんでパンケーキを注文し、それを全部食べる、といった荒技を披露したことだった。
しかし、ご本人は「僕、パンケーキ好きなんですよね」と、ケセラセラで、
さらに"そんなの関係ねえ"のポーズまでやってくれた。
本当におもしろい方なのである。
で、結局、朝の6時まで飲んでいた…。

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