TopProfileReleaseBBSGalleryDiaryEssayLink

▼駄文 第7回 一年分の…

ある日のこと、私は事務所でたまった雑用を何となく片づけていた。
奥澤以外のスタッフは外出していたが、仕事の電話もなく、大変穏やかな午後であった。
しかし、その時はまだ、この後起こる異常な事態を想像すらできなかったのである。

午後4時頃のことであった。入り口のインターフォンが来客を告げる。
奥澤が対応したところ宅配業者で、前日注文した品物を届けにきてくれたらしい。
とはいえ、これはいつものことなので、私は別に気にとめることもなかった。

納入されたものは、巨大なダンボールに入ったトイレットペーパーであった。

「こんなに頼んだの?」と、奥澤に訊くと「玲子さんが注文したから知らないです」と言う。
とはいえ、トイレットペーパーが多いからといって、わざわざ打ち合わせに行っている安田に確認するまでもない。
どうせ、いずれは使いきってしまうと思ったからである。

しかし、宅配業者は「あ、これだけじゃないんです、今お持ちします」と、車に戻っていった。
何か他に頼んだのであろうか、とドアを開け待っていると、再び巨大なダンボールに入ったトイレットペーパーが!

「ちょ、ちょっと待ってください、これは…」と言いかけたところ、「いや、まだあるんです」と言い、再び車に戻っていく。
今度は何を、と思っていると、ああ!やっぱり巨大なダンボールに入ったトイレットペーパーだ。

事務所の入り口に次々と積まれていくダンボール。しかも中身は全てトイレットペーパーである。
最後の箱が運び込まれる頃は、これはどう考えても、配達先が違うのだろう、と思った。
なぜなら、ダンボール箱の他に袋に入ったトイレットペーパーもあり、通常はそれだけで十分な量だからである。

「これはおそらく何かの間違いですね、確認して頂けますか?」と業者に訊くと、注文通りであり間違いない、と言う。
「でも、こんなちっちゃい事務所で、コレはないと思いませんか?」
とくいさがったところ、業者は積み上がったダンボールにチラと目をやり、ぷっと笑った。
しかし、再び車に積み込むのはイヤみたいで、もう帰ろうとしている。
奥澤は必死になって注文書と納品書を照らし合わせているが、なにしろ数が多いため、確認はなかなかはかどらない。

しばらくの沈黙が続いたが、「私は運んでいるだけなんで…」と、
ついに業者は逃げるように帰ってしまった。

残された私たちは、ダンボールの山を前にただ呆然としていた。
「どうするんですか、コレ…」
そう奥澤に訊かれても、答えることなどできるわけがない。
「とにかく、もう一度注文書を確認してみよう」
と私は言い、奥澤と今一度、入念に注文書の確認をした。

そして数分後、驚くべきことが判明した。
なんと、注文は正しかったのである!

事の真相を確認すべく、奥澤が安田の携帯に連絡を入れる。
ちょうど安田は打ち合わせ場所の建物に入る直前で、運良くつかまった。

これまでのいきさつ、そして現在の玄関の様子などを説明したところ、
安田は涙を流しながら笑い、言葉にならなかったという。
さらに、打ち合わせ前にこんなに笑わせないで、と逆ギレされたらしい。

要するに、袋と箱を取り違えた誤注文であったのだが、
それにしても、コレを一体どうするのか?

いくら私でも、こんなにうんこは出ないぞ。

<<第6回 潮干狩り 川井のエッセイ 第7回 実録!警察21時半頃>>